Python環境構築:業務効率化のためのおすすめ開発環境ガイド

この記事は以下の方を対象としています。
・Pythonの環境構築について基本から知りたい方
・Pythonのプログラムとライブラリの関係を知りたい方
・Windowsの事務業務用の開発環境には、VSCodeが良いか、Anaconda、IDLEが良いか知りたい方

目次

Pythonの環境構築(開発環境)を基本から知ってすっきりしよう!!

こんにちは。自動化コンサルタントの江坂です。

「Pythonの環境構築とか、開発環境ってよく聞くけど、いろいろあって、よく分からない。」という意見をよく聞きます。また、環境構築の方法がよく分からなくてPythonの勉強を最初の段階でつまずく方も多く見えます。

今回は、Pythonの環境構築、開発環境の基礎から解説します。基礎とはいえ、私も今回の内容を理解するのに、1年くらいかかってしまいました。学習の前に知っておくと、理解を深めることができ、自分に最適な環境を構築するとき、スムーズに進めることができます。

本コラムのゴール

Windowsにおいて事務業務の効率化のためにPythonの開発環境の基本を理解し、環境構築を進めるための基本知識を習得します。

(1) Pythonの環境構築(開発環境)とは何か

Pythonの魅力である各種のライブラリ(サードパーティライブラリ)は、Pythonのインストール後、追加してインストールする必要があります。

また、Pythonは、Pythonの本体のプログラムをインストールしただけでは使うことができません。プログラムを書いたり、実行結果を表示させたりするための統合開発環境が必要となります。

このように、Pythonを使うためにライブラリ等を整えた状態を開発環境といい、開発環境を整えることを環境構築するといいます。

以下の図にWindowsの事務業務用のパソコンを用いて、Excelや、業務用システムを操作する場合の開発環境の一例を示します。

図1 事務業務の効率化のための開発環境の例(概念図)

【代替テキスト:Pythonの開発環境の概念図(例)】

■■■図のファイル名(開発環境の概念図.png)

以下、詳しく解説します。

①Pythonの本体のプログラム

Pythonの各種の動作の本体となる部分です。

Pythonソフトウェア財団(Python Software Foundation)が開発しています。

プログラム本体をインタープリタと呼ぶことがあります。

②組み込み関数

インポートやインストールすることなく使用可能な関数です。

③標準ライブラリ

Python 標準ライブラリとは、Python本体と同時にインストールされるライブラリのことです。インストールされていますが、プログラムで使用するときは、インポートが必要です。

④サードパーティライブラリ

Pythonソフトウェア財団以外の各種専門機関、あるいは、個人の作ったライブラリです。サードパーティライブラリは、Pythonのインストール時にはインストールされません。必要なときに、インターネット上のPyPIというサイトからインストールする必要があります。

⑤PyPI

PyPIとは、「Python Package Index」の略です。

PyPIは、プログラミング言語Python用のソフトウェアのリポジトリです。リポジトリとは、貯蔵庫という意味で、各種のサードパーティライブラリが集められているサイトです。

⑥pip

pipとは、「package installer for Python」の略です。

PyPIというサイトからサードパーティライブラリをインストールするためのツール(インストーラ)です。

各種ライブラリには、Pythonのバージョンの指定がされています。pipは、Pythonのバージョンを考慮しつつインストールします。

ライブラリの中には、他のライブラリを使っている(依存性があるといいます)ものがあります。pipは、依存性のあるライブラリのバージョンも考慮しつつインストールします。

このため、単にインストーラと呼ぶのではなく、パッケージ管理ツールと呼ばれることがあります。

pipは、コマンドプロンプト、または、Windows PowerShellで操作します。

補足説明:Python本体とサードパーティライブラリの関係

Pythonは、Pythonソフトウェア財団が作成し、サードパーティライブラリはその他の各種専門機関、あるいは、個人の方が作成しています。このため、Python本体のプログラムとサードパーティライブラリのバージョンアップのタイミングは、必ずしも同時ではありません。このため、あるライブラリを使用するときは、最新バージョンのPythonを使い、あるライブラリを使用するときは、旧バージョンのPythonを使用する場合があります。

このため、Pythonは、複数バージョンのPythonを同時にパソコンの中にインストールすることが可能になっています。

⑦ランチャー

ところで、上記のように、複数バージョンのPythonがインストールされているケースにおいて、サードパーティライブラリは、Pythonのバージョンを指定してインストールする必要があります。

Windowsの環境では、Pythonのバージョンを指定してサードパーティライブラリをインストールするためのツールとして、ランチャーというツールがあります。

Pythonのバージョン 3.3 で追加されました。

図2 複数バージョンのPythonを使用する場合

【代替テキスト:複数バージョンのPythonを使用する場合】

■■■図のファイル名(ランチャーとpipの働き.png)

⑧ブラウザ操作用のドライバ

自動処理では、ブラウザ上で動作する業務用システムを操作させる場合があります。各ブラウザには、自動処理で使用することができるブラウザ操作用のドライバが用意されています。このドライバも入手します。

⑨統合開発環境

次章で詳しく解説します。

(2) 統合開発環境:VSCode、Anaconda、IDLEの比較

Pythonを用いて事務業務の効率化を進めるには、プログラムを書いたり、実行結果を表示させたりするための統合開発環境が必要となります。

事務業務の効率化のための統合開発環境には、主にVSCode、Anaconda、IDLEがあります。それぞれのメリット、デメリットについて解説します。

表1 統合開発環境の比較

   VSCode       AnacondaIDLE
開発元MicrosoftAnaconda社Pythonソフトウェア財団
サードパーティ
ライブラリの入手元
PyPIAnaconda専用のリポジトリPyPI
コスト無償有償
(従業員数200人以上の場合)
無償

2.1 VSCode

Microsoftが開発した統合開発環境です。無償で使用可能です。現在、多くの方がPythonの統合開発環境として使用しています。

【メリット】

VSCodeは、各種の機能をカスタマイズして自分好みに設定することができます。また、各種の拡張機能を用いて、いろいろと便利な機能を使うことができます。インターネット上にも情報が多くあります。

プログラムのコードを自動チェックしてくれる拡張機能(pylance)、コードの表記ルール(PEP8コーディング規約)に適合した表記に修正してくれる拡張機能(black、isort)等の便利な拡張機能があります。

【デメリット】

カスタマイズできる点が多く、最初、何を設定、選択したら良いか迷う方が見えます。

2.2 Anaconda

Anacondaとは、Anaconda社によるPythonのディストリビューションです。

オープンソースソフトウェアというのは、ライセンスによっては、一定の条件を満たすことで再配布することが可能となっており、Anacondaという企業がPythonの本体プログラムと、ライブラリ、統合開発環境をセットして再配布(ディストリビューション)したものです。

【メリット】

Anacondaは科学技術系の処理をするライブラリが充実しております。科学技術系の処理をするとき、Anacondaにしかないライブラリを使用する場合は、Anacondaを選択することになります。

【デメリット】

企業で使用する場合、有料となります(本記事の執筆時点で、社員数が200人を超える場合)。業務効率化の目的の1つには、作業を自動化し、コストを削減することです。コスト削減という視点において、有償であることはデメリットとなります。条件に適合せずに、無償のまま使用することはコンプライアンス上、問題になりますので、ご注意ください。

【注意事項】

Anacondaには、非常に多くのライブラリがありますが、ただし、PyPI(Python本体のライブラリのリポジトリ)にあってAnacondaのリポジトリにないライブラリもあります。このようなケースで、Anacondaの使用時、PyPIからライブラリを入手すると、環境衝突と言ってAnacondaでの開発環境が壊れてしまいます。そのような場合は、conda-forge等、PyPI以外のリポジトリから、インストールする必要があります。

※事務業務の効率化において、クリップボードを操作するライブラリであるpyperclipを使うと便利な場合があります。執筆時点でAnacondaのリポジトリにはありませんのでご注意ください。

2.3 IDLE

Pythonをインストールする時に同時にインストールされます。

【メリット】

統合開発環境として十分使用することができます。初心者の方にも使用しやすいです。

基本機能に関しては、インターネット上で十分、情報を得ることができます。

【デメリット】

仮想環境の構築等も可能なのですが、高度な内容を実行しようとするとインターネット等の情報が少ないです。

まとめ

Pythonは、オープンソースソフトウェアなので、無償で使えることもあり、勉強する方、活用される方が増えています。乗り遅れることなく、この流れの中に入りましょう。

現在、Pythonを使っている方のお話を聞くと、Pythonの将来性を感じて勉強を始めたとのお話を聞きます。現在、人気の高いプログラミング言語であり、将来、活躍の幅が広がることと思います。

今回は、Windowsで事務業務の効率化のための開発環境の基本を解説しました。基本を押さえておくと、各種の情報を理解しやすくなります。

また、Pythonを活用した自動化ソリューションに興味がある方は以下のページをご覧ください。
https://gw-python.com/python-auto

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著者:江坂 和明(えざか かずあき)

自動化コンサルタント。
名古屋大学大学院 農学研究科修了。大手メーカに勤務。
製品の研究開発において、統計手法を活用。社内の管理業務に用いる業務用システムの企画、開発、運用を担当。また、業務用システムの運用効率化のため、RPA、Pythonを活用した業務効率化に取り組む。

著書:Python業務自動化マスタリングハンドブック(秀和システム)。

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